「冊子」とは?意味や製本の基礎知識を紹介
普段、何気なく使う「冊子」という言葉ですが、どんなものが「冊子」に当たるのか知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
冊子とは主に「糸で綴じた本」のことです。
この記事では、冊子の意味や定義、冊子製本の綴じ方や印刷方法、用語など基礎知識をわかりやすく解説します。
「冊子」の意味・定義
冊子(さっし)の意味としては、一般的に「表紙があり、構成される束状の印刷物を綴 (と) じたもの」です。
冊子を辞書で調べると「糸で綴 (と) じた本。または書物一般」と出てきます。しかし、近年では糸を使用せずに、針金(ホッチキス)や糊(のり)で綴じるものも多いです。
小冊子とは
一方で「小冊子」と呼ばれるものもありますよね。小冊子とは、小型でページ数の少ない冊子のことです。
冊子と小冊子はページ数で区別されています。 たとえば、パンフレットやフロアガイドなどのページ数の少ないものは、一般的に小冊子とされています。
具体的に言うと、小冊子のページ数は「5ページから48ページで、不定期的に発行されている冊子」と定義されています(※ユネスコ総会の国際基準)。サイズはA4以下のものが一般的で、中綴じ・無線綴じといった簡易的な製本で作られることが多いです。
「小冊子」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> 小冊子とは?メリットや作り方をわかりやすく解説
パンフレットとは
小冊子の中には「パンフレット」と呼ばれるものも存在します。パンフレットとは、装丁やハードカバーが付かない冊子のことです。
紙質が柔らかくてページがめくりやすくて読みやすい、画像が目に飛び込んできやすいというイメージがあるのではないでしょうか。
ちなみにパンフレットにも近い意味合いの「ブックレット」とは、広告要素のない読み物の性質が強い小冊子のことです。CDの歌詞カードやDVDの特典冊子、ゲームの解説書などが該当します。
パンフレットについてこちらでも詳しく紹介しています。
>> パンフレットとは?リーフレットとの違いについても紹介
冊子の綴じ方・製本の種類
先ほどお伝えしたように、冊子の定義は「表紙があり、構成される束状の印刷物を綴じたもの」でしたが、綴じ方にもさまざまな種類があるのです。
ここでは代表的な4つの綴じ方、製本の種類を解説します。
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- 中綴じ製本
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- 無線綴じ製本
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- 平綴じ製本
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- 上製本
大きな違いとしては、中綴じ・無線綴じ・平綴じは表紙が柔らかいタイプ(ソフトカバー)で、上製本はハードカバーになっています。
こちらでは上記以外の製本についても詳しく解説しております。
>> 冊子の綴じ方、製本の種類とは?
中綴じ製本
中綴じ製本は、週刊誌などの雑誌に使われている製本方式です。
綴じ方は、束にした印刷物をちょうど半分におり、その真ん中(折り目になるところ)をホッチキスで止めます。真ん”中”で綴じることから中綴じと言われているのです。
非常にシンプルな作りで便利なのですが、分厚いものはホッチキスができないなどのデメリットもあります。そのためページ数が少ないものが向いています。
「中綴じ」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> 中綴じ製本とは?メリットやデータ作成の注意点も解説
無線綴じ製本
無線綴じ製本は、文庫本や分厚いカタログなどに使われる製本方式です。
無線綴じを行う手順は次のようになっています。
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- 表紙と本文の2つを別々に準備します
- 作り方はシンプルで、表紙の背表紙となる部分に糊をつけ、中身を貼り付けるだけ
簡単な作りですが、強度は高く、ページ数の多い本や高級な本などによく使用されています。
「無線綴じ」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> 【製本の基礎知識】無線綴じ冊子ってどんな冊子?
PUR製本
無線綴じの1つで「PUR(ピーユーアール)製本」という製本方法をご紹介します。「PUR製法って何?」という方も多いと思いますが、実は通常の無線綴じに比べて、ページの開きやすさや、耐久性・耐熱性にも優れた、とても魅力的な製本方法なんです。
PUR製本は、無線綴じに使用する糊(ホットメルト)に、強度・耐熱性に優れたPUR糊を使用する製本方法です。通常の無線綴じより、より丈夫で開きがよい冊子に仕上がります。
PUR製本の特徴として、次のことが挙げられます。
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- 本を抑えなくても開いたままの状態を維持できる
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- ページが開きやすい(快適に読書できる)
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- 見開きページでもきれいに表現できる
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- 書き込みがしやすい
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- コピーが取りやすい
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- 繰り返しの開閉にも強い
本を見ながら両手を使いたい料理のレシピ本や楽譜、写真集・美術書・図鑑、カタログ、ビジネス資料、教科書・参考書などさまざまな分野・領域で活用できる製本方法です。
「PUR製本」についてはこちらで詳しく解説しています。
>>PUR製本とは?無線綴じや新PUR製本との違いについても紹介
平綴じ製本
平綴じ製本は、教科書や学会での資料などに使われる製本方式です。
平綴じを行う場合は、糸や針金(ホッチキス)を使用します。 いわゆる「ホッチキス留め」と言われるものと同じ作り方で、中身となる印刷物の束をまとめ、ページの端から余白を1cmほど残して糸や針金で留める作り方です。
特徴としては、少ないページ数から綴じることができ、価格がリーズナブルで納期も短いことが多いことが挙げられます。
ただ注意点として、余白を残して綴じるためページが最後まで開けないということも。そのため、平綴じのデータを作成する際には綴じ部分の余白に注意が必要です。
ちなみに、今まで紹介した3つ「中綴じ」「無線綴じ」「平綴じ」は、全て表紙が柔らかいタイプ(ソフトカバー)であり、総じて「並製本」と言われています。
「平綴じ」についてはこちらで詳しく解説しています。
>>平綴じとは?中綴じ・無線綴じ冊子との違いと選び方
上製本
上製本とは、表紙が硬いカバーなどで覆われている本(ハードカバー)に使われる製本方式です。
冊子の耐久性・保管性をより重視する場合に、使われることが一般的で、絵本や小説を中心とした多くの書籍や辞典などに使われています。
冊子の綴じ方向の種類
左綴じ(左開き)
左綴じとは、本を綴じる位置(ステッチの位置や糊貼りする位置)が、表紙から見て左にある綴じ方のものを指します。
左綴じにおすすめの冊子ー説明書やパンフレットなど
左綴じは一般的には、説明書やパンフレットなどの横文字で記される冊子の場合に使用されます。
右綴じ(右開き)
右綴じとは、左綴じの逆で、表紙から見たときに、右側に綴じがある綴じ方のものを指します。
右綴じにおすすめの冊子ー小説や漫画など
縦方向に文字が記される小説や漫画などに使用されるのが一般的です。
「左綴じ・右綴じ」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> 【製本】右綴じ・左綴じの理由と冊子作成時のポイント
印刷方式の種類
ここまで製本方法を紹介してきましたが、併せて確認しておきたいのが、印刷方式の種類です。
ここでは次の2種類の印刷方式を紹介します。
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- オフセット印刷
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- デジタル印刷
オフセット印刷
オフセット印刷とは、版を使用した印刷方式です。版と用紙が直接触れず(オフ)に印刷される(セット)ことからこのように呼ばれています。
その仕組みは、次のようになっています。
①版にインクをつける
②ブランケットと呼ばれるものにそれを転写する
③ブランケットから用紙に転写する
メリットとしては、大部数を速くきれいに印刷できることです。ただ、一方で版を掘らなければいけないなど印刷までの工程もかかり、コストも高いといったデメリットもあります。
「オフセット印刷」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> オフセット印刷とは?その特徴を解説
チラシ・カタログなど大部数のときにオフセット印刷がおすすめ
オフセット印刷に向いている印刷物は次のようなものです。
・新聞
・書籍
・雑誌
・写真集
・高級美術書
ネット印刷プリントモールでは、オフセット印刷のチラシやポスター印刷も承ります。
>>大部数のチラシ・ダイレクトメール・ポスターのオフセット印刷は「プリントモール」へご相談ください。
デジタル印刷(オンデマンド印刷)
デジタル印刷(オンデマンド印刷)とは、オフセット印刷と違い、版を作らずに、必要なときに必要な部数だけを印刷する方式です。少部数の印刷物を低価格で制作できるなどの特徴があり、この方法で印刷をする事例も増えています。
デジタル印刷の方法として、高細密のトナーによるレーザープリントや、インクジェットプリント等があり、パソコンから直接印刷機にデジタルデータを送るというものです。
いわゆる印刷機による印刷で、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの4種類の組み合わせから色を表現することが一般的となっています。
小ロットの印刷にデジタル印刷がおすすめ
版を作らない分、印刷工程までに時間も労力もかからないですが、印刷のたびに色がやや変化するなどのデメリットがあります。小ロットの印刷をしたいとき、コストが安いのでおすすめです。
「オンデマンド印刷」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> オンデマンド印刷とは? オフセット印刷との違いと特徴
冊子本のサイズ
冊子本の代表的なサイズは5つあります。 A4・B5・A5・B6・四六版です。
「冊子のサイズ」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> 冊子・本のサイズ(判型)を詳しく知りたい
冊子のページ数は4の倍数が基本
冊子は「4の倍数」のページ数で作るのが基本です。 これは、印刷現場で1枚の紙に8面あるいは16面付で印刷するためです。
またページの数え方にも注意が必要です。 ページは、同じ用紙を用いる最初のページから数え始めます。
そのため、当店では中綴じ製本は、表紙を含めた総ページ数が「4の倍数」、無線綴じ製本は、表紙を含めない本文ページ数を「8の倍数」とする必要があります。
「冊子のページ数の数え方」についてはこちらで詳しく解説しています。
>> 【製本知識】冊子、表紙・本文のページ数の数え方
冊子の種類別おすすめサイズ・仕様
冊子の代表的な種類別におすすめのサイズや仕様をご紹介します。
パンフレット
企業の製品紹介などで使われるパンフレット。サイズはA4、製本方法は中綴じがおすすめです。
おすすめの紙質はマットコート紙90kgで、16ページ19,954円〜で販売しています。プリントモールでは、100部からの小部数、短納期を実現する最新デジタル印刷機にて印刷いたします。
>> 中綴じ冊子パンフレットの印刷はこちらから
また、プリントモールでは、1枚ものや折り加工を施したパンフレットも気軽に注文できます。
>> リーフ・パンフレット印刷はこちらから
パンフレットの作り方についてはこちらで解説しております。
>> パンフレットの作り方を紹介!手に取ってもらえるパンフ作成の流れとコツ
カタログ
企業の商品を掲載し、購入につなげるカタログ。薄手でページ数が少ないものは中綴じ、分厚いものは無線綴じがおすすめです。
無線綴じのA4サイズ、フルカラーで、表紙をカード紙180kg、本文をマットコート紙70kgとした場合、36ページで42,994円〜で販売しています。
>> カタログの印刷はこちらから
カタログを作成する際のポイントはこちらで詳しく解説しております。
>>カタログ作成・作り方のポイントは?印刷費用についても解説
取扱い説明書(マニュアル)・教材テキスト
マニュアルや教材など一定のページ数が必要なものは、無線綴じがおすすめです。
無線綴じのA4サイズ、フルカラーで、表紙をマットコート紙135kg、本文を上質紙70kgとした場合、52ページで54,846円〜で販売しています。
>> マニュアルなどの印刷はこちらから
マニュアルをはじめとする冊子印刷の方法について、詳しくはこちらをご覧ください。
>> 卒論・論文・研究報告書におすすめの製本方法とは?
用紙の種類と選び方
冊子に使う印刷用紙にはさまざまな種類があります。
表紙と本文でも使う紙質を紙質が違います。以下をご参考ください。
表紙 | カード紙、コート紙など |
本文 | 写真メインなら、マットコート紙文章メインなら、上質紙、マットコート紙 |
長期保存を求める場合は、厚みがあり丈夫でコーティングされた耐久性に優れた用紙を選びましょう。
本文は写真中心か、文章中心の冊子かによって、おすすめの用紙が違います。どういう構成にするかを検討したうえで、適切な用紙をお選びください。
印刷用紙の種類と特徴については、こちらをご覧ください。
>> 印刷用紙の種類をわかりやすく解説!おすすめの用途もご紹介
印刷用紙の選び方はこちらで詳しく解説しております。
>> 印刷用紙選びガイド:コート紙、マット紙、上質紙、その他の用紙を解説
代表的な紙の種類とおすすめの選び方について、それぞれ解説します。
文字主体のプリントなら上質紙
上質紙は、コート紙のように塗工されていないため光沢やツヤが少なめという特徴を持ったものです。またパルプ100%で作られており、コシがあって破れにくいメリットもあります。
上質紙は、数多くの種類がある印刷用紙の中でも、最もポピュラーなもののひとつです。学校で使用するノートやプリント、仕事で使う書類や名刺、あるいは書籍などまで多様な目的で使われており、皆さんも一度は手に取ったことがあるのではないでしょうか。
このような点から、上質紙は文字中心の印刷物や、何度もページをめくる機会が多い印刷物に適しています。
広告・パンフレットならコート紙
コート紙は光沢感を持ち、鮮やかな印刷が映える特性があります。写真やカラフルなグラフィックスを使用した広告やパンフレットに適しています。
写真・画像メインの冊子にしたいときは、コート紙がおすすめです。
>>コート紙とは?光沢があって色が映える!印刷用紙の種類と違いを紹介
報告書など情報重視の冊子は上質紙
上質紙は文字中心の印刷物や、何度もページをめくる機会が多い印刷物に適しており、ビジネス報告書に適しています。情報重視のデザインに向いており、視覚的な魅力だけでなく、情報伝達にも適した用紙です。
写真を扱うカタログや教材などにマットコート紙
マット紙の特徴は、光沢を抑えた質感で、落ち着いた雰囲気を持っています。
そのため、ビジネス報告書やフォトブックに適しています。情報重視のデザインに向いており、視覚的な魅力だけでなく、情報伝達にも適した用紙です。
このため、写真を扱うファッション誌のカタログや教材、書籍などのカラー印刷に好んで利用されることが多くなっています。
冊子でよく使う用語を解説!
冊子印刷を注文しようと思ったとき、専門用語が出てきてわからないことはありませんか?わかりやすく解説します。
天と地
本の表紙を正面に見たときに、一番上の部分を「天」、一番下の部分を「地」と言います。
背・小口・ノド・ノンブル
どれも冊子を構成する箇所の名称です。
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- 背…本のタイトルなどが記載されている背表紙の部分。
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- 小口…背の真反対の部分。本を開くときに指で触る部分。
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- ノド…本が綴じられている根元の部分。
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- ノンブル…本文内に記されたページ数を表す数字。
小口・ノンブルについて、詳しくはこちらをご参考ください。
>> 本・冊子の専門用語「小口」とは?
>>【冊子印刷で押さえたい】ノンブルの配置位置について
丁合と折丁
印刷現場で使われる用語です。
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- 折丁(おりちょう)…印刷された紙をページ順になるように折り畳んだもの。
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- 丁合(ちょうあい)…印刷された折丁 (おりちょう) を1冊になるようページ順に集める作業。
表紙(表1・表2・表3・表4)
表紙(表紙まわり)…4面から成される冊子の中身を包むもの。表紙まわりとも呼びます。 表紙は以下の4面から構成されます。
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- 表1…表紙
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- 表2…表紙の裏
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- 表3…裏表紙の裏
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- 表4…裏表紙
こちらで詳しく解説しておりますので、ぜひご参考ください。
>>表1・表2・表3・表4って何? 冊子の「表紙まわり」について
カバーと見返し
どちらも冊子を構成する一部の名称です。
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- カバー…表紙の上にかけられているもの。冊子を痛めない役割を担う。
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- 見返し…表紙と本の中身を接着するために用いられる紙。
DTP
英語で、Desk Top Publishing(デスクトップパブリッシング)の略で、直訳すると「机上出版」や「卓上出版」の意味合いを持っています。
具体的には、パソコン上で印刷物のデータを制作すること、もしくはそのシステムを指します。
DTPで使用される代表的なアプリケーションとしては、Adobe社のIllustrator、Photoshop、Indesignがあります。
>> 本・冊子の各部の名称を解説
冊子のことならプリントモールにご相談ください
この記事では、冊子とは何か、その意味や定義、冊子の綴じ方、製本の種類、選び方などについて解説しました。
冊子の世界は非常に奥が深く、専門用語も多いです。
初めて冊子を作る方は、印刷会社など専門の方に相談すると良いでしょう。
冊子を作る際には、ネット印刷プリントモールにご相談ください。